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男子、厨房に入らずんば……

森 雅志 1997.01
 最近しきりに「男女共生社会の実現」だとか「男女共同参画社会づくり」だとかという言葉を耳にする。

 昭和五〇年の国際婦人年、平成七年の世界女性会議におけるNGOフォーラムなどをきっかけとして、地球上に数多く存在する女性問題の解決に向けてさまざまな取り組みが展開されてきたことによるものである。

 そしてその流れは最近になってからは、女性の生活や権利の向上を図っていくということに加えて、本当の意味での男女の平等社会の実現を目指そうということも主張されてきている。

 それを受けて、国においても男女雇用機会均等法や労働基準法の女子保護規定などの見直しの検討をしており、県においても「新富山女性プラン」の改定作業を進めているのである。そして見かけだけではない男女の平等を実現していくためには、こういった法律や制度からのアプローチのみならず、家庭や地域に存する問題がポイントであり、何よりも一人一人の意識を如何に変化させていくのかということが重要なのでる。

 例えば次のような問題がある。県内においては共稼ぎ率が極めて高い。これは一つには女性自身の働きたいという意識が強いということが背景であろうが、他方で、「嫁」も外にでて働くべきだとする社会や家庭内での考え方があることも否めないと思う。そして一方では、女性の管理職の割合が大変に低いという状況もあるのである。こちらの理由としては女性自身の中にあまり責任の重い立場につきたくないという思いがあるのかも知れないが、同時に残業や出張、あるいは転勤といったことなどに対応できないほどに家事負担が重いという点も大きな理由であろう。したがって働いている女性にとっては「男は仕事、女は家庭」ではなく「男は仕事、女は仕事と家庭」というのが実態なのである。

 かりに男が家事をする場合であっても「手伝ってやっている」という意識が働いていることが多い。男の側のこういった意識こそが問題なのであり、「男も仕事と家庭」だというふうに意識変化を図っていくべきなのである。男子厨房に入るべし!なのである。

 少子・高齢化社会においては確実に女性の社会参加が進む。だからこそせめて僕だけでも進んで厨房に入ることにしておこう。

(やがて男性受難時代になると予感する僕はこうやって媚びを売って生きて行くのだ。)