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東京問題

森 雅志 2004.02
 今回のタイトルは「東京問題」です。そう言われても何のことか分からないという人が大多数でしょう。「爆笑問題」なら知っているという若者や、「東京物語」なら昔、映画館で見たという人は多いのかも知れません。しかしこれから述べるのは原節子が出てくるような話ではなくて財政の問題なのです。

 国は平成16年度の予算編成にあたって三位一体の改革と称し補助金と地方交付税と財源委譲とを一緒に見直すこととしました。その結果、国庫補助負担金は総額1兆円を削減し、地方交付税を大幅に抑制したうえで、地方への財源委譲として4,249億円の所得譲与税を新設しました。

分り易くするために富山市への影響額を具体的に示してみますと、まず国庫補助負担金は約10億円削減された上に、地方交付税は平成15年に比べて28億円の減収となり、その代わりに所得譲与税として約5億円が入ってくることとなりました。つまり国との関係において富山市は実質的に約33億円の減収になるということです。

これではたまったものではありません。何が三位一体の改革なのだと言わなければなりません。ただでさえ厳しい地方の財政に大きな影響を与えることとなります。

問題は財源委譲のやり方に起因しているのです。つまり所得譲与税は人口に比例して配分される制度なので大都会に集中して流れるということです。このように財源委譲の結果として税収が大都市圏に集中することが「東京問題」なのです。このままでは片山鳥取県知事が言うように、三位一体の改革は東京都だけのための改革になりかねないのです。しかし石原東京都知事は東京には大都市特有の財政需要があるのだと言って地方の声を批判しています。確かに都会には都会の主張があるのでしょう。都会の納税者からは地方に無駄があるように見えるのでしょう。また、国全体の将来を考えれば国家財政の健全化は必要です。しかしこのままでは地方がもちません。この問題はこれから全国を揺るがす大問題となります。我々も声を出していかなくてはなりません。

そこで一つの提案をしてみたいと思います。それは大都会の住民に限り、自分の故郷の自治体に寄付をした場合に、所得税の申告に際してその寄付額全額について税額控除を認めてはどうかというものです。(もちろん税額控除額に上限の設定をする必要はあります。)つまり故郷に寄付をした分だけ納税額が減るという仕組みです。それによって愛郷心が育まれ、同時に故郷も少しは潤うというものです。地方に対する財源保証機能を確立できないのなら、せめてこういった「故郷思いやり減税」や「親孝行減税」の導入を検討すべきだと声を大にして言いたいのです。

もっとも、「東京問題」に愚痴を言う前に富山ならではのやり方で問題に対処していくことが重要なことは言うまでもありませんが。