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更生を支援する人たち

森 雅志 2005.01
 性犯罪者は再犯性が高いので、地域の安全のために刑の執行を終えた後でも住所情報などを管理すべきだという議論が起きている。一方、前歴者であっても人権は保護されるべきだという反論も出ている。前歴者の人権と地域の安全との調整という難しい問題だ。前歴者の再犯性を考える前提として本稿においては前歴者の更生について述べてみたい。
 犯罪や非行をした人も処分を受けた後は地域社会の中で生活をする。処分を受けたことにより深く反省し社会人として更生を遂げたとしたら、前歴者であるという理由で差別されることがあってはならないのは当然だ。しかし刑務所等を出た人が再び社会で生活することは容易なことではなく、そのことから再犯が芽生えることもある。そこで、立ち直ろうとする人と地域社会との橋渡しをしながら再犯防止のための活動しているのが「更生保護」活動である。
 更生保護活動の大きな柱は保護観察である。裁判所の判決によって保護観察を命じられた人や、刑務所・少年院を仮出所・仮退院をして保護観察を受けることになった人は保護観察官によって処遇方針を決められることになるが、その際に民間のボランティアである担当の保護司が指名される。保護司は保護観察官と協力して保護観察処分となった者の立ち直りのために指導や援助をすることになる。保護司は実費が支給されるものの無給であり、表に出ないところで大変な苦労の伴う職責である。市内にも約150名の保護司が活躍されていることを市民の皆さんにも認識して欲しいと思う。
 更生保護活動のもう一つの柱は、刑務所や少年院を出た人がスムーズに社会復帰できるよう生活環境を整える活動である。市内には「富山養得園」という更生保護施設があり、ここで出所後に行き場のない人に対して宿泊や食事の提供、更には就職の世話などがされているのである。ここは国費が投入されているものの民間の施設であり、自治体や篤志家による補助によって運営されているのである。出所後に家族や友人などに受け入れてもらえない状況の者が、一定の援助なしに就職先や定住地を見つけることが困難であることは容易に理解できる。この施設はその援助を担う県内唯一の施設であり、再犯防止の観点からも社会全体で支えていく必要があると思う。
 そして、こういった更生保護活動を支援するボランティア団体として更生保護女性会やBBSという団体があり、前歴者や非行に陥った人たちの相談に応じ、更には非行防止活動などに取り組まれている。
 また、忘れてならないのが犯罪や非行歴のある人たちを差別することなく雇用している協力雇用主の存在である。就職によって更生の可能性が広がるのだから、こういった事業者の存在は極めて重要だと言える。
 いずれにしても多くの関係者の地道な取り組みによって更生の道が支えられていることに感謝し応援する気持ちが大切だと思う。有り難いことだ。