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草むしりは奥が深い

森 雅志 2006.10.05
 実を言うと、僕は庭の草むしりが好きだ。もつともここ数年はじっくりと作業をする時間が取れずご無沙汰ではあるのだが。それだけににわかに信じてもらえないかも知れないが、本当のところ僕は草むしりが好きなのだ。以前は早朝の1、2時間、よく庭に這いつくばっていたものだ。もちろん汗みどろにはなるし腰が痛くなることもある。それでも、小さな雑草の根本の部分を二本の指でつまみ、微妙に力を加減しながらそっと引き抜いて根っこの先までがきれいに取れた時の快感は何とも言えないのだ。力加減を間違えた時は、草は取れても根っこまで引き抜くことが出来ず面白くない。やはり根っこの細い先までキチンと引き抜いてこそ満足のいく仕事ぶりであり、チョットした征服感を味わえるのである。それが楽しくて続けていると、やがてストレスがスーッと消えていき、些かオーバーだが無心になれたような気になる。それが良くて好きなのだ。草むしりは実のところ奥が深いのである。
 ところが雑草というのは不思議なもので中途半端に草取りをすると眠っていたものが目を覚したかのようにどんどん増えるのである。したがってやるからには一日仕事だと決め込んで徹底的にやらなくてはならないのだ。しかし残念ながら今の僕はなかなかその時間を見つけることが出来ないのである。
仕方なくこの数年はシルバー人材センターから二人の人に除草作業に来てもらっている。いつも同じ方に来ていただくが実に丁寧な作業ぶりである。僕の草むしりと違い、専門家は静かに淡々としかし実にきれいに仕上げていくのだ。毎月定まった日というわけではなく、天候を見ながら日を選んで来ていただく。お陰で庭の雑草が大人しくなったような気がする。有り難いことだ。
シルバー人材センターには、我が家に来てもらっている二人に代表される健康で働く意欲のある60歳以上の方が2000人以上も会員として登録されており、除草のみならず襖や障子の張り替え、網戸の手入れ、植木の剪定その他の技能作業や自動車の運転、さらには一般の事務や経理など多岐にわたる仕事をこなしているのである。センターは個人や企業から仕事を引き受け、希望する会員にそれを依頼するという仕組みだ。会員は雇用されて仕事に就くわけではないので、働いたことの対価は給料や賃金ではなく「配分金」というものである。したがって公的年金が減額されることがないため働く意欲のある高齢者にはありがたい制度となっている。もちろん「配分金」は雑所得にはなるものの特別控除があり配慮されている。また就業中のケガや事故に備えセンターが団体障害保険に加入しており安心だ。元気で意欲のある方に是非ともこの制度を知ってもらいたいと思う。
先のお二人にはいつまでも元気で続けていただきたい。さもないと我が家の庭はやがて雑草に埋め尽くされるに違いないのだから…。