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大往生の島に学ぶこと

森 雅志 2007.02.05
 年末に山口県の周防大島に出かけた。この島は現在は合併により周防大島町となっているものの、以前は四つの町から成っていた。その一つの旧東和町はかつて17年連続して日本一の高齢化の町であった。島の高齢化率は45%であり、富山市の22.5%と比べると高齢者の島だと言われることが納得できる。
島の南に沖家室島という小さな島があるが、ここはこの町の中でも最も高齢化率の高い地域であり、約80%にも達している。80歳以上が全人口の四分の一を占めるこの島では70歳以下は青年団扱いなのだ。多くの高齢者が一人暮らしであるものの、小魚を採ったり野菜を栽培したりしながら自給自足の生活を楽しんでいるのである。
島には泊清寺という寺がある。その住職が新山玄雄氏であり、この町の議長を務めている。新山氏の言によれば、老人たちはしばしばこの寺に集まっては住職の説教に耳を傾け、語り合い、笑いあうという。ほとんど老人だけの島という条件にもかかわらず、人々の屈託のない明るさとたくましさの秘密がここにある。老人どうしが助け合いながら生き生きと過ごし、やがて心に「安心立命」の落ち着きを得ていくのであろう。この島が「大往生の島」と言われる所以がここにある。
周防大島町の介護保険料は基準額で月額3,400円あり、富山市の4,780円と比べるとかなり安い。その理由として島では介護サービスの利用をしない人が多いことがあげられる。島には元気な高齢者が圧倒的に多いのである。つまり島の暮らしが究極の介護予防となっているということだ。
介護予防と言えば、その拠点施設として「地域包括支援センター」が国において制定された。この施策は富山市が平成15年から進めてきた、富山型の在宅介護支援センターがモデルとなっている。国では富山の制度を参考にしながら、保健師または看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員の三職種を配置したセンターの制度を創設したのである。このセンターでは、高齢者が元気で暮らすための介護予防事業や相談事業、虐待防止などを行う権利擁護事業、さらには地域での支援体制を整備する事業などを行っている。センター誕生から10カ月。全国的には上手く機能していない地域が多いと言われる中で、本市においてはセンターの職員がきめ細かく地域回りをし、介護予防や認知症の説明会などを開催していることからスムーズに機能している。市民の皆さんにはセンターを大いに利用して欲しいと思う。
介護予防とは高齢者の力を維持し要介護状態にならないようにするということ。いわば沖家室島の暮らし方に学ぶということだろう。市では3月25日に先に紹介した新山玄雄住職を招いて介護予防推進フォーラムを開催する。新山氏の講演では大往生の島の本質が語られるに違いない。多くの市民の皆さんに学んで欲しいと思う。目から鱗が落ちるかも?