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布団干し日和

森 雅志 2013.08.05
 暑い日が続く。僕が眠っている部屋にはエアコンが無いのでしばしばサッシを開けて網戸越しに風を入れて寝ている。微風があればそれなりに涼しく眠りにつくことができる。それでも雨が降りそうなときはそんなわけにはいかず、仕方なくサッシを閉めて寝ることとなる。当然のことだが、汗みどろになってしまう。汗みどろになりながらも酔っぱらった勢いで熟睡できているのである。何の根拠があるわけじゃないのだけれども、エアコンを使わないほうが身体に良いと信じ込んでいる時代錯誤の塊のような人間なのである。この歳になるまで、そうやって毎年の夏を乗り切ってきたのだ。今年もできないはずがない。
 でもまあ、そんなことが続けば布団が湿っぽくなってくるのは当然である。タオルケットだって乾燥したものを使いたいと思う。どっちみち暑い日が続いているのだから、かんかん照りの午後などに思いっきり布団を干したいと思う。干したいとは思うのだけど、これがなかなかに難しいのである。一日中家にいるということがほとんどないからである。いくら大雑把に生活している僕であっても、夕立を恐れずに布団を干したまま外出する度胸は無い。仮に夕立が無いとしても、夕方の適当な時間に帰宅して干した布団を取り込むことができるかどうかも分からない。その結果、布団乾燥機の出番がやってくるのである。
 こんな悩みはわが家だけのことではないのではないかと思う。たとえばぽっかりと予定の空いた日ができたとしても、その日が布団を干すにうってつけの日和になるとは限らないからである。そんなふうに思ったら、多くの家庭ではこの布団干しの問題をどうやって解決しているのだろうかと気になってきた。
 そんなことを気にしながら出張で出かけた東京で、あることに気がついた。羽田空港からのモノレールの車窓から見えるマンションのベランダには結構布団が干されているのである。意外に感じたこともあり、それ以来モノレール沿線のマンションのベランダ観察を続けていると、結構な頻度で布団が干されているのである。一方、富山の街並みの中で布団が干されているマンションや家並みを見る頻度は低いような気がする。この違いはどこから来るのだろうか。東京の人のほうが汗かきなのか。東京のほうが夕立が少ないのか。富山の人は布団を人に見せたくないのか。いろいろ考えてたどり着いた結論は、東京のマンションの布団を干してある住居には雨が降ってきたら取り込める人がいるということである。近くに買い物に行くことがあっても長時間家を空けることが無いということだ。一方の富山の暮らしはどうか。わが家がそうであるように日中無人になる家が多いということだ。だから急な雨が怖くて布団を干せないということになっているのではないのか。
 問題の核心は家事をする人が日中にいるかどうかということなのだ。専業主婦か専業主夫がいるかどうかなのだ。言い方を換えると女性の就業率が影響しているということになるのだと思う。富山市の15歳から64歳までの女性の就業率は全国の中核市の中で一番高いというデータがある。働いている女性が多いということが布団を干している家庭が少ないという結果に繋がっているのではなかろうか。ということは富山の布団乾燥機の普及率も高いということか?
(布団を干しにくい話から女性の就業率にまで繋げるとは無茶苦茶が過ぎたかも。)