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僕の靴下物語

森 雅志 2015.02.05
 15年ほど前に流行ったルーズソックスが最近になって再びブームになってきたという報道に触れて驚いた。昔はわが家の長女を含めて女子高校生の必須アイテムだった。白い100cm程の長さのソックスをわざわざ弛ませて、だらしなく履いていた娘に何度も注意したことが懐かしい。それに比べると、最近の女子高生は紺色や黒色のハイソックスを着用しているケースが多く、爽やかさが感じられて良かったのだがなあ…。もっとも、実際にあのボリューム感あふれるルーズソックスを着用しているのを見たことはないので報道がオーバーなのかも知れない。
 僕自身は靴下が緩んでいると気になってしようが無い。いつもビシッとしまった靴下姿でいたいと思っているからだ。足元は身だしなみの重要なポイントだと思う。手入れされた靴と弛んでいない靴下を身に付けてこそ人前で足を組むことができる。いつもそのことを意識していたいと思う。
 一時期は、組んだ足元から脛が見えるのが嫌でハイソックスばかりを履いていたことがある。ところが夏場などに膝下の締まった部分が痒くなって困るということが起きる。室温の高い部屋に長くいる場合にも同じことが起きる。そんなこともあって最近はハイソックス離れとなってしまった。
 また、ある時は男性用のガーターベルトを使ってみたこともある。ふくらはぎの上の部分にベルトを巻いて、そこから下がった金具で靴下の上部をはさみ、下がらなくするというものだ。ところがこれもまたベルト部分の肌が荒れるということになって使用中止。更には、一種の糊のようなものを塗って留めるということも試してみた。しかしこれもまた肌荒れを招いてしまった。
 いろんな失敗を重ねた結果として、ごくシンプルな方法に落ち着いた。弛んできた靴下は履かないということである。それからは色々な靴下を買うことが楽しみとなっている。羽田空港のターミナルビルに靴下専門店があり、空港で時間ができたときはなるべくその店を覗くことにしている。おかげでオシャレな靴下をたくさん揃えることができている。そのうえ最近は、気に入った靴下を一度に二足ずつ買うことも多い。こうすることで二日続けて同じ柄の靴下を楽しめるからだ。洗濯のしやすさのこともあって綿の靴下が圧倒的に多いのだが、色遣いに惹かれてウールのものを買うこともある。肌触り感が良くて快適でもある。
ところが良いに悪いは付き物で、ウールの靴下は洗濯がやっかいだ。縮みを防いだり、風合いを損なわないためには手洗い、自然乾燥が望ましく、洗濯機を使わないほうが良いということになるのである。そのうえ水温が高いと縮みの原因となるので、ぬるま湯で手洗いをすることになる。まずは裏返して水に浸す、中性洗剤を使ってやさしく押し洗いをする。洗い終わっても強くは絞らない。そして最後は履き口を上にして日陰干しをする。僕は今の季節でも頑張ってこの作業をしているのだ。すべては、殆んど誰にも気づいてもらえない足元のオシャレのためなのである。
綿の靴下の場合はそんな丁寧なことはしていない。裏返しにして洗濯ネットにいれたら下着などと一緒に洗濯機に突っ込んでいる。本当は乾燥機を使用しないほうが良いのだろうけど、面倒なのでつい…。別段、綿に恨みは無いけれどウールソックスの扱いとはずいぶん違う。まあ今年はひつじ年だから良しとしましょうか。