過去のエッセイ→ Essay Back Number

クラクション・アレルギー

森 雅志 2004.04
 東洋経済新報社が発表した全国約700都市の住み良さランキングで富山市が前年に続いて第5位に入った。住み良い都市として評価されたことを素直に喜びたいと思う。
 しかしデータ上での評価だけでなく、他都市から来富された方から真に評価してもらえる街づくりこそが大切なのである。そこで県外企業の富山赴任者との懇話会などを開催しているのだが、富山についてストレートに語ってもらえる機会であり大変参考になる。
 そんな折りに耳にして嬉しくなるのが「富山の街はきれいだ。」という声である。日頃からきれいな街を創ろうと言い続けている僕としてはこういう評価を大切にしたいと思う。きれいな街を目指していろいろと取り組んでいるところだが、今年は新たに街路樹の手入れや雪囲いなどの予算を増額して冬季の風物詩としての魅力を高めることも企図した。これからも市民の皆さんとともに落ち着きのあるきれいな街を創っていきたいと思う。
 逆に批判的な意見を耳にするのが交通マナーについてである。中でもクラクションの音が多いとの指摘を受けた時は静かな街だと思っていただけにいささかショックであった。
 そう言えば街頭におけるクラクション音と都市の成熟度とが関連しているという説を聞いたことがある。途上国において深夜のクラクション音に閉口したという人は多いと思う。この説にたてば富山の都市住民としての意識は低いということになる。もっともニューヨークはうるさくてしょうがないという都市だから一概には言えまい。いずれにしても過剰なクラクション音はいただけない。
 僕はクルマの運転が好きだが基本的にクラクションは使わない。そもそも無くても良いとさえ思っている。危険が生じたらハンドルを切るかブレーキを踏むべきであり、警笛など役には立たないと思う。間一髪というときにクラクションを鳴らす暇など無いと思う。路上で聞こえるクラクション音の多くは誰かに合図を送っているか、割り込まれたことなどに対する腹いせか欲求不満の解消などの類だと思う。時には傲岸にも歩行者に対して「どけどけ!」と言っているクラクション音さえあるが如何かと思う。
そもそも道路交通法上はやたらに警笛を鳴らすと罰せられることになっているのだ。ヨーロッパのクルマには鳴らしにくいようにハンドルについていないものさえある。また北京では一部地域においてクラクションを禁止しているくらいなのだ。そんなことを参考にすればクラクションを鳴らさないで運転する静かな社会を創ることは可能だと思う。
僕自身の意見に偏りすぎているかも知れないけれど、クラクション・アレルギーの僕としては静かにかつ譲り合いながらスムーズに流れる車社会が望ましいと思う。過剰なクラクション音が聞こえる街では「住み良さランキング」を返上しなければならないと思うのだが…。



目次