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早起きのススメ

森 雅志 2005.10
 最近、朝の四時半に起きている。真夏と違ってさすがに真っ暗だ。真っ暗ではあるが気合いを入れて冷水で顔を洗い、いっきに目覚めてしまう。目覚めたら直ぐ行動開始だ。
当然の事ながら早起きにはそれなりの目的がある。一つは週に二・三度受講しているイタリア語のプライベートレッスンである。大阪にいるイタリア人と一種のTV電話を経由しながら会話をするのだ。もっとも会話とは未だ言い難く、単語の羅列と言うべきか。なんにしてもこれが結構楽しいのだ。相手をしてくれるルカというイタリア人と波長があっているからだろう。一昨年から始めたイタリア語も中だるみがあったが、やっと面白さを感じている。いつも持ち歩いている単語帳も増えてきた。若い頃と違って覚える先から忘れていくという情けなさではあるが飽くことなく続けようと思う。
 実は最近になって、この早朝レッスンに加えてもう一つ新しい学習機会を得ることができた。富山に住んでいるイタリア語ができるイギリス人の女性を紹介してもらったのである。週に一度だけレッスンを受けているのだが、これがまた楽しい。なにせ、日本語ができないイギリス人と英会話力が甚だしく落ちてしまった日本人がイタリア語の勉強をしているのだからまことに滑稽な様子を呈している。しかしその混乱ぶりがまたオモシロイのだ。しばらくは楽しい日が続きそうである。
 さて、早起きのもう一つの目的は何か。晴天の朝を選んで走っている二五〇ccのスクーターなのである。五時に家を出て一時間半ほどを掛けて市内のあちこちをうろうろしているだけなのだがこれがまた実に楽しい。夜から朝に移る瞬間の光の動き。少しずつシルエットを現してくる山々。朝露に満ちた木々。そして生気あふれる鳥のさえずり。そういった朝の世界の中を少しの冷気を感じながら疾走していく瞬間は本当に気持ちがいい。車の運転よりも強い緊張感が求められるところも良い。無茶をしないという自制心と適度な緊張感が必要だという意味において僕らのようなオジサン世代にこそ相応しい遊びではないのかと思う。苦労して自動二輪の免許に挑戦した甲斐があったというものだ。
 二つの楽しみのお陰で酒を飲んだ翌朝も早起きができる。過去を懐かしがる歳にはなったが、新しいことに挑戦しようとする意欲も旺盛である。その意欲を満たすためにも早朝という時間を大切にしていきたいものだ。

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