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水道水が、最高金賞

森 雅志 2013.09.05
 富山県、石川県のロータリークラブとベルギーのロータリークラブとの間で実施されている交換留学プログラムで来日した若者たちが市役所を訪ねてくれた。16歳から22歳までの高校生や大学生の8名であった。いろいろと歓談した中で、富山市の印象を尋ねたところ、一人の青年が「街の中に花がたくさんあり、緑が多く、落書きがほとんど無くて、ゴミもあまり落ちていないことに驚いた。」と発言してくれた。この発言を聞いて素直に嬉しかった。この10年間ほど、何とかしてきれいな街にしたいと取り組んできたことを、何の予断も持たずに評価してくれたことに感謝したい。
 そして、もう一つ出てきた発言が「どうして富山の水はこんなに美味しいのか?」というものであった。「京都の水とはぜんぜん違うのは何故か?」という質問もあった。どちらもほんの数日間滞在するだけの街なのに、ふたつの街の水道水の違いを敏感に感じ取っていることに驚かされてしまった。この“水道水が美味しい”という指摘は、街がきれいだという指摘にも勝る嬉しい評価であった。
 富山市の水道水の源は有峰湖である。この有峰湖から発電所導水管を使って通水され、やがて常西用水として分流された水を原水としている。有峰湖から約27kmの距離を高速で流れてきた水を取水して、それを浄水したうえで水道水として供給しているのである。
 まず、有峰湖の周囲の山々に注目したい。この原生林はもっぱら広葉樹林なのである。この豊かな広葉樹林帯に降った雨や雪が時間をかけて有峰湖に溜まることでミネラル分が豊富な水となるのである。美味しい水道水の原点がここにある。
そして、その水が長い距離を速いスピードで流れ落ちてきた果てに取水されているのだから、溜まったままの水やゆるい流れの水を取水している場合と違い、清冽な水を得ることができる。それを原水として水道水が作られているのだから冷たくて新鮮な水が出来上がることになる。
その水道水をペットボトルに詰めた「とやまの水」が2013年度モンドセレクションの最高金賞を受賞した。富山市の水道水は最高金賞の旨さだとお墨付きをもらったようなものである。いろいろな商品や食品のメーカーがモンドセレクションで賞を受けたことを盛んに宣伝しているので、富山市としても少しは「とやまの水」を宣伝しようと、ポスターを作った。市の政策参与でもあるイラストレーターの長友啓典さんにお願いして出来上がったポスターのコピーが素晴らしいので紹介をしておきたい。まずはこのエッセイのタイトルである「水道水が、最高金賞。」というコピー。そしてもう一つが「とやまの水 富山市でふだん飲んでいる水道水が、なんと2013モンドセレクション最高金賞を受賞しました。富山市民がうらやましいでしょ。」というもの。これからいろんな場所にこのポスターを掲出していきたいと思っている。そして来街された多くの皆さんに「とやまの水」を賞味してもらえたらありがたい。また市民の皆さんにもこの受賞を契機にして、美味しい水道水を再認識してもらえたらいいなと思う。
さて、このモンドセレクションの主催団体はベルギーに本部を置いている。ベルギーの団体から評価を受けた水を、ベルギーの若者が美味しいと言ってくれたことは、偶然とはいえ面白かった。

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