最近、しばしば自分が老化してきたなぁと感じさせられる。まさか加齢臭を発散していることはないだろうけれど…。少なくとも記憶力が減退していることは間違いがない。あるいは発想が大人しくなっている。過激がいいというわけじゃないけれど、まったくトゲや毒がないのもいただけないと思う。 実際、エレベーターなどの閉鎖空間に身をおいた際にその場の平均年齢を押し上げている自分に気づくことがしばしばである。若さがうらやましい。 ところが、先日の森 光子さん主演の「おもろい女」を観劇した際には久しぶりに自分が平均年齢を下げているなと感じて笑ってしまった。僕ら夫婦の周りはほとんどの人が高齢者だったからである。 面白いのはその高齢者の集団のほとんどの人よりも舞台上で熱演していた森 光子さんのほうが年長だということだ。85歳にもなろうかという人の演技を60代、70代の皆さんが楽しんでいるのだけれども、その観客のほうがよほど年寄りなのである。まず私語が多くてうるさい。決して舞台に集中していないわけではなく、皆さん楽しんでいるのではあるが、まるで家庭でテレビを見ているかのように隣り同士で解説しあったり意見を言ったりしながらの観劇なのである。そのくせ感情移入も激しいものだから時々奇声を発したり叫んだりするものだから、うるさいっと言ったらないのだ。そっと注意しようかと振り返ってみたが、皆さんの顔を見てあきらめた。とても通用しそうになかったからだ…。そして次には何かを食べる音にも悩まされることとなる。あらかじめ用意されているところを見るといつもそうしているのだろうか?あな、おそろしや。 やがて高齢者が激増していくことを考えると大変だ。コンサート会場や劇場は舞台の上よりも観客席から発せられる声のほうが大きくなるかもしれない。そしたら舞台の演者はそれに負けじと大音声になり、それにつれてまた…という風に連鎖して行き、最後はもう大爆発だア!ということになりかねないぞ。場合によったら、客席で踊り始めたり食べるものがなくなったと言って出前を取るものが現れたり…。そんなことはないにしても恐ろしいことになりかねないのだ。 もっともその頃には僕もその集団にしっかり仲間入りしているのかもしれないなあ。いや最前列の席で大声を上げているに違いない。「いいぞ!いけいけ!」「ウルセーゾー!」「腹減ったあ。なんかよこせ!」「踊り子のスカートをもっと短くしろい」「金かえせー!」なんてネ。
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