平成24年4月22日

 
 『物の怪夜話』

「おーっ。焼き鰈に蚕豆の翡翠煮、蕗の佃煮、そのうえに海苔を巻き込んだ卵の焼き巻き。おいおい結構な折り詰めじゃねぇか。どこで貰って来たのかぁ知らねぇが、なかなかの肴だねぇ。てめぇの家じゃ酌婦もいねぇけど、早くやろうぜ。まだかい! 燗は!」

「あちちちっ…と。さあさあやりますか。」

「さあさあ、一杯。俺ゃあ手酌でいくぜ。全国手酌の会ってやつでい。」

「で、なんだね。南部の大揺れ。ありゃぁ、大した大揺れだったけど、あっちの方じゃまだお片づけが済んじゃいねぇんだょね。」

「いやあ、酷いもんだね。あっちこっちの藩からお手伝い方が行ってるってことだが…。大変だねぇ。なんでも、家や家財のがらくたや木っ端なんてぇのが文字通り山のようになってるっていうんだから大変だよ。しょうがねぇからあっちこっちの藩に運んで一寸づつ片付けりゃぁいいんじゃねぇかってことになってるらしいんだがね、それがちっとも捗らねぇってんだから困ったもんだよ。」

「なんで捗らねぇんだい。」

「何でも、がれきってやつに物の怪がついてるってことらしいや。」

「物の怪が! そりゃ大変じゃねぇか。そんなものをあちこち移動させりゃ、物の怪が広がっちまうぜ。」

「いやぁ、だからそうならねぇように、物の怪に憑かれた物はその場所でお方付けをやるってんだよ。まぁ、物の怪って言っても、今、俺らがいるこの場所だってまったく無ぇって訳じゃねぇだろ。なんて言ゃあいいんだかわかんねぇんだけど、お天道様の下でどこにでもある物の怪ってのは、まあ、言ってみりゃぁ、当ったり前じゃねぇか。その当ったり前の物の怪ってのは物の怪に憑かれてるてぇことにゃぁならねぇんだ。そりゃそうじゃねぇか。どうでぇ。」

「そりゃぁそうさ。当ったり前のもんなんだからなぁ。」

「ところが、その当ったり前の物を運ぼうとすると、そりゃぁ駄目だと騒ぎ立てる酷い手合いがいてね、お片づけが一向に進まないってことになってるってこった。」

「当ったり前のものになんで騒ぎ立てやがんだよ。当ったり前のもんなんてどこにでもあるんじゃねぇか。」

「それがこの手合いに言わせるとそうはならねえ。当ったり前の物の怪かどうか分かったもんじゃねぇ。ってまあ、そんな理屈だね。もっと酷いのは、当ったり前のもんでも気に入らない、やがて物の怪立つに違いない。なんて訳の分からんことまで言い出してる始末さ。まあ、言ってみりゃ、物の怪狂騒教の盲信徒ってとこかねぇ。ほとんど気を違えた連中さ。」

「そんなら物の怪お吟味役のお役人に物の怪量りで量ってもらやぁいいじゃねぇか。当ったり前のもんかどうかを量ってもらって、こんなら大丈夫って物だけを扱ゃぁいいじゃねぇか。」

「そんなことぁ分かってんだよ。その理屈の通らない手合いが騒いでことが進まねぇって言ってんじゃねぇか。」

「いわゆる、なにかい。のいじー・くれーまーってやつかい。」

「お前ねぇ、カタカナ語はカタカナで言ってくんねぇかぃ。何を言ってんのか分からねぇじゃねぇか。」

「いやだからね、理不尽な妄言で世の中を滅茶滅茶にしようとする手合いってことさ。そんな連中はどこにでもいるもんさ。いちいち相手にしないで放っときゃいいってもんだ。当ったり前のもんなら俺たちゃ構わねぇぜ。俺ん家に持ってきたっていいくらいだ。南部のお人方は困ってるんだろ。早く手伝ってやるってことが人の道ってもんじゃねぇか。お代官様や庄屋様に、俺らぁ何でも手伝いますって申し上げてぇくらいだぃ。」

「いやぁ、まったくそうだ。ところが世の中にゃ、隠れ物の怪教信者もいるらしいって言うからね、一人ひとり踏み絵を踏ゃあどうだい。そのうえで、当ったり前を受け付けないって手合いを村から追い出しゃいいじゃねぇか。そんな連中がいなくなったからって何てことねぇさ。」

「そんなことより困ってる人方を手伝うことの方が先決だろ。さっそく明日にも俺らの大八車で出立しようじゃねぇか。」

「よっしゃぁ、合点だい。ところでもう1本燗をつけねぇかぃ。酒と女は二合までってね。」

平成24年4月20日

 仕事がヒマなのかな。ここのところ毎日のように書き込みの時間が取れる。まあ、いいか。
 
 今日の朝刊に「中国人船長に懲役30年」という見出しの小さな記事があった。朝鮮半島西側の黄海で昨年12月に発生した違法操業の中国船船長による韓国海洋警察係官殺害事件の判決である。取り締まりにあたった海洋警察係官を刃物で切りつけ、1人を殺害し1人に重傷を負わせた事件である。この犯人に対して韓国・仁川地裁は懲役30年、罰金2千万ウォン(約143万円)を言い渡したのである。一昨年の9月7日にわが国の尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突事件に際してのわが国政府の対応と比べて見れば、民主党政府の腰の引けようがあらためて浮き彫りになる。殺害事件と船の衝突事件とは違うという論者がいるかもしれないが、故意に漁船を衝突させる行為の悪質さの方が大きいと僕は思う。にもかかわらず処分保留のまま出国させたのだからなぁ…。それに対して韓国の対応はどうだ。違法な操業、そして殺害事件について国内法に基づき起訴をし、裁判所が刑事罰を課す。あたり前のことだ。それができないわが国政府だからなめられるのであろう。しっかりしろ!と言ってみても詮無いことか。

 今日は口直しにもう一題。

 先ほど、県庁前の電停で先頭の人が小さな旗を掲げた30人ほどの集団を見かけた。松川のほうから歩道を歩いてきて、ちょうどやってきた黒色のセントラムに急ぎながら乗り込んでいるところに遭遇したのである。松川で桜をみた後で桜のラッピングが施された黒色のセントラムに乗るというのが良かった。いかにもバスツアーでやってきた観光客のようであり旅行会社を確認しようと近づいてみたのだが、見覚えのない○○観光というふうに読めた。最初はいよいよバスツアーのメニューの中にセントラム乗車が組み込まれたのかと単純に喜んでいたのだが、○○観光の文字から推測すると台湾からの観光客ではないかと思われた。そう考えるともっと嬉しくなり、この稿になった次第。
 ところであのツアーの添乗員は市内の路面電車が外国から来た方は無料で乗れることを知っていたのだろうか。市内のホテルのフロントに行けば外国人用の無料チケットが用意されているのだけれど…。
 
 

平成24年4月19日

 桜が少しづつ散り始めたがまだまだ数日間は散り際の風情を楽しめるなぁ、そう思いながら自宅を出ようとしたところ、父と母が敷地内の交配種の梨の木の花を取っている姿を目にした。梨の花もここ数日のうちにほころび始めてきたもののまだまだ花弁は堅い。そんな中でも、人工授粉用の花粉をとるために交配種の木から花を取る作業が始まったのだ。花粉を採取するための木だけは他のものよりも早く花が開こうとする。かわいそうではあるが、その開き始めた花をちぎって花粉を取るのである。毎年の作業が始まったのだ。わが家にとって大切な作業であり、風物詩である。桜の次は梨の花が開いて、来週は地域一帯が白い花で埋め尽くされるに違いない。そして今年も生産者にとって忙しい季節がやってくる。
 88歳の父と84歳の母が爽やかな朝に2人で作業をしている姿はほのぼのとした気分にさせられた。一年を通して梨の栽培に精を出していることが元気で暮らしていく源になっているのだろう。元気でいてくれることが嬉しいし感謝しなければならない。そう思いながら声もかけずに出勤してきたが、何となく心苦しかった。高齢の2人が精を出している姿を認めたのなら手伝えばいいものを。否、それどころか本来なら後継者のはずだ。どこかで忙しさに区切りを付けて後継者として働き始めるべきではないのか。(もっともその能力はとても持ち合わせていないのだけど…。) 今年も作が良くて台風の来ない年でありますように。

平成24年4月17日

 最近、新入社員の自宅を会社の担当者が訪ねるという取り組みをしている企業が増えていると聞いて驚いた。小学校の家庭訪問と同じく、企業による新入社員の家庭訪問なのである。何故そういう取り組みが必要なのか不思議に感じていたのだが、過日ある企業の経営者から理由を聞かされて納得した。新人の採用に当たっての面接のあり方に起因していたのである。いつの頃からか面接に当たっては個人の思想・信条に関することやプライバシーの侵害になることなどを質問してはならないとされている。したがって家族構成や家族の職業などを尋ねることができない。その結果、家族の中に過激思想の持ち主がいたり、暴力団関係者がいたとしても会社として認識できないこととなる。ゴミ屋敷に生活していて周囲とトラブルがあったとしても分からないこととなる。家庭訪問によってそういった課題のすべてが一挙に解決するわけではないものの常識的な判断の材料にはなるだろう。まあ簡単に言うと以上のような背景らしい。なるほどね、と納得した次第。
 そのうちに父兄参観もできたりしてね。などと冗談を口にしていたら帰宅した娘から次のように聞かされた。「お父さん、来月、会社から家庭訪問があるって。」 はたしてわが家の評価は如何に!


平成24年4月12日

 やっと暖かくなってきた。春本番である。松川沿いの桜が3分咲きくらいになっている。おそらく週末には満開になるだろう。今年も県立図書館の奥にある立派な桜を見に行きたいと思う。あまり知られていないけれど富山市の一つの財産だと思う。満開になると圧倒されるくらいの枝ぶりである。大切にしたい。
  
 4月から働きはじめた下の娘が張り切っている。先週は合宿形式の研修だったので家にいなかったけれど、今週からは毎朝元気に出勤している。先輩と一緒に営業で外回りに出ているとのことだが、おそらく名刺を出しての挨拶回りだろう。初々しさと緊張感とが同居している表情で出掛けていくのをうるさがられない様にしながら見送っている。来週はまた合宿だとのことだが、そろそろ中身の濃い研修に入っていくのだろう。いろいろな面で成長してくれると嬉しいのだが、まずはスモール・ステップからだ。こちらも巣立ちの春本番である。
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