永田和宏さんの書かれた「近代秀歌」(岩波新書)を読んだ。永田和宏、河野裕子夫妻の歌集は以前に何冊か読んでいるのだが、歌詠みではない僕としてはこの二人のおかげで短歌との距離を縮めてくれる機会をもらったと思っている。さて、「近代秀歌」である。近代以降に作られた歌の中から著者が100首を選んで解説をしてくれるという優れものである。たまには短歌に触れてみるのも良いかと軽い気持ちで読み始めたのだが、著者の次の文章で怖気づいてしまった。「挑戦的な言い方をすれば、あなたが日本人なら、せめてこれくらいの歌は知っておいて欲しいというぎりぎりの100首であると思いたい」と言っているのだ。また著者はあとがきの中で次のようにも述べている。「教養というものを、みずからの知的好奇心によって収集された知識を内包しつつ、その反映としての人間性の発露を言うとするならば、ある程度の、あるいは最低限の共通の教養を持っているということは、他の人々と接するための、つつしみぶかい礼儀の一つでもあると思うのである」と。 これは困ったぞと思いながら、何とか読み終えることができた。解説されている100首のうち、僕が知っていた歌は、おぼろげなものも含めて、何と11首しかなかった。暗誦できそうなものはそのうちの5首ほどかな。これでは、つつしみぶかい礼儀を帯びて人と接する資格などないということになる。わが身の教養のなさと不明を恥じるばかりである。歌について語る資格はまったくないということが明らかになった。当然と言えば当然ではあるがね。ところで、この「近代秀歌」と一緒にもう一冊「現代秀歌」という本も買ってある。こちらの100首の中に読んだことのある歌が何首あるものやら。今日から読み始めることとします。
|