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子どもたちの帰化申請

森 雅志 1993.04
 最近、在日韓国人・朝鮮人の方々から帰化手続に関する相談を何件か受けた。
 相談者の皆さんに共通しているのは、ご自身のこともさることながら、子供たちの帰化を優先したいという希望が強いことである。
 そして高校へ入るまでに子供たちの帰化を終えたいと皆さんが考えている様である。
 もちろん永住権を有する場合には高校への入学資格が無条件に認められているのだから、高校受験に際して国籍が問題になることはないだろう。やはり将来就職しようとするときに、教員や一般公務員のように国籍条項があって受験できないことがあることに備えてのことが大きな理由であろうと考えていた。
 そしてそれなら、せめて子供たちが自分で自分自身の国籍の決定について判断できるような年齢になってからでも遅くないのではないかとも思っていた。

ところが、ある相談者の方から次のように聞かされてハッとさせられた。
 「最近は高校生でも修学旅行とかで外国にでかけることが多い……。その時に自分の子供だけが他の子たちと違うパスポートを持っていて、違う窓口で出入国の手続をしなければならないこともありうる。そんなときに子供が嫌な思いをしないようにと思って……。」
 そう言われてみると、在日韓国・朝鮮人の方がそう多くない富山県の場合、前述のようなケースで学校や教師や同級生たちがはたして何事も無かったように問題なく対応ができるかどうか確かに不安を感じる。
 国際化が唱えられ、環日本海時代と言われて久しいし、四月からはアシアナ航空のソウル便も就航する。それだけに今後益々高校生をはじめとする青少年の海外派遣や研修旅行などが増加するものと予想される。
 そんな中で前述の親たちのように子供の戸惑いや、困惑や、悩みを案じて早く帰化をしようとしている人たちがいることを何処まで私達は意識していたであろうか。
 外国を知り外国人と交流を深めていくことは確かに重要である。しかしそれと同時に、日本で産まれ、育ち、日本の中の一員として生活している隣人たちがいることも私達はもう一度しっかりと認識をしなければなるまい。そして同じ「日本語人」として、そんな隣人たちと共に歩いて行けるような社会を一日も早く造らなければならないと思う。