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森と金太郎

森 雅志 2005.09.05
 「想像していたよりも凄いなぁ。」
 昨年の台風23号によって県内のあちこちで大きな倒木被害が発生したことは認識していたし、街路樹などの被害の様子も目にしていた。しかしながら山間地の森林での被害状況を現地で目の当たりにして思わず口にしたのが先の感想である。
 強風で倒れたり折れたりした多くの木々が林間に放置されたままになっており、根こそぎ倒れたものは枯死しようとしている。しかし大きな木々も多く簡単に片づけるという訳にはいかない。大量の人力と機械力が必要であり手の施しようがない状況だと思う。
 森林が直面している問題は台風被害だけではない。ミズナラ、コナラといった木々が虫害によってどんどん枯死してきているのだ。山中に分け入って防除をすることはとてもできないことであり、これもまた手の施しようがない現状である。
 なによりも戦後の植林政策によって作られた杉などの人工林が、木材価格の低迷や従事者の高齢化などによる林業の衰退によって手入れが行き届かず放置されているという大きな問題がある。その結果間伐が充分に施されず、杉が過密に繁茂し、下層植生の少ない樹林が現出することとなる。そして森は保水力や表土を安定させる力を失い、土砂崩れを引き起こすことに連鎖していくのである。
 かつて薪炭を取るために人手が入っていた里山が荒れている問題もある。これにより熊や猿、イノシシなどの獣害も深刻化しているのだ。
 これらの問題は決して森林地帯だけの問題ではなく、水害防止や水源涵養という視点からも下流域に住む市民の問題なのである。いわば全ての市民に突きつけられた問題なのだ。われわれ全員が当事者意識を持たなければならないのである。費用や労力の負担を含めて森林保全に積極的に関わっていくことがこれからの大きなテーマである。
 そこで先ずは、都市住民を含めた幅広い市民による里山再生のための助っ人部隊を作りたいと計画しているのだ。それが「きんたろう倶楽部」の立ち上げである。専門的な林業施業の手伝いはともかく、竹や低木の伐採における補助要員としてのボランティア組織を発足させようというのである。この秋にも計画の詳細をまとめて具体の内容を発表したいと考えているところだが、是非多くの市民に関心を旺盛にしてもらい協力をお願いしたいと思っている。
 ところで、僕が金太郎みたいなので「きんたろう倶楽部」という名前なのかと訊ねた方があった。アンパンマンだと言われることはあっても金太郎だと言われたのは始めてのことで驚いたが、決してそういう意味ではなく、金太郎の持つ、熊などの動物との共生というイメージを強調したいからである。たくさんの金太郎が誕生することを期待したい。