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君が代は

森 雅志 2006.04
 トリノ五輪の際に荒川静香選手が日の丸を仰ぎながら君が代に合わせて唇を動かせていた姿に感動した人は多いと思う。その後しばらくの間、新聞にこのことに関する投稿が多かったことを見ても全国の人を感動させたことが分かる。
ところで、一時代前とは違い彼女に限らず君が代をチャント歌う若者が多くなっている気がする。当然のこととは言え、良い傾向だと思う。サッカー選手が試合前に歌っている映像も何度か目にした。大相撲の千秋楽では会場全体で国歌斉唱がされるが、はたして朝青龍はどうしているのだろう。そんな心配をさせないためにもここはやっぱり栃東の頑張りに期待というところか。
 昔、小学校のPTAをやっていた頃は歌わない教師や保護者が何人もいて一人でよく腹をたてていた。そんな教師の顔と名前をしっかり頭に刻みながら、怒りの軽蔑光線を照射してやったが当然ながら何の効果もなく、意地になって大声で歌っていたものだ。県議会にいた頃、ある先輩議員からは「歌詞が気に入らないから俺はハミングで歌うんだ」と聞かされたこともある。その時はいろんな人がいるものだと驚いたが、今でも例の政党は歌わないのかしらん。そんなことを思うにつけ荒川選手の功績は大きいと思う。
 ところで、最近国歌斉唱をするたびに感じることがある。それはテープなどで流れる演奏のテンポを外して早く歌う人が沢山いるということだ。特に一定の年齢から上の人にその傾向が顕著だ。カラオケ上手が多い世の中なのにチョットした不思議である。ひょっとしたら昔の君が代はもっとアップテンポだったのだろうか。それとも昔は伴奏があまり行われず、アカペラで歌うことが多かったからなのかもしれない。いずれにしてもそんな時に僕はみんなに引っ張られずにテンポを守って大声で歌うことにしている。気合いを入れて歌っているとやがて全体のテンポを修正できることがあるが、そんな時は実に気分が良くいよいよ大音声になる。
 ところで君が代の二題目をご存じかな。 明治十四年にわが国初の音楽教科書「小学唱歌集初編」が発行されており、その中の君が代は一・二番であったそうだ。二番の歌詞は次のとおり。
  君が代は ちひろの底の さざれいしの
鵜のゐる磯と あらはるゝまで 
いつか知ったかぶりをして歌ってみますかナ。