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女神の乳房

森 雅志 2009.08.05
 僕の好きな画家に高塚省吾画伯がいる。清楚で透明感のある女性の裸体を得意とする作家である。県内では、某ゴルフ場に何点か展示されているが、僕は数年前にそこで作品を見て気に入り、ずいぶん苦労してパステル画一点を購入することが出来た。若い女性の裸体ではあるが娘たちも気に入ってくれ、自宅に飾って鑑賞している。繊細で優美な作品で香り高い。残念ながら画伯は一昨年に早世してしまった。もう新しい作品に触れることが出来なくなっただけに自宅の一点を大切にしたいと思う。
 さて、女性のしなやかな肉体が生み出す優美なラインは、ローマ時代のヴィーナスをはじめとしていつの時代にも美の典型として賛美されてきた。そしてしばしば裸体画に描かれる柔らかな乳房はその皮膚の下にある情熱や生命の営みを象徴する。活き活きとした生命の息吹を暗示している。だからこそ乳房の美しさが芸術として昇華するのだと思う。
女性の乳房は美しいだけではなく女神のように気高くもあると思う。しかし、その気高い健康美の乳房に病魔が忍び寄るという悲劇が起きることがある。乳がんという病魔である。女神を病魔が襲うということだ。
女性のがんの部位別の死亡率では乳がんは第5位となっているものの、年齢別に見てみると30歳から64歳までの層で一番死亡率が高いのが乳がんなのである。また、乳がんに罹患する女性は30歳を過ぎた頃から急に増え始め、おおむね35歳以下で発症する若年性乳がんは進行が早く悪性度が高い傾向にある。今年上映された「余命一ヶ月の花嫁」という映画のように一番輝いている世代の若者にも悲劇が襲うのである。
ところで、この乳がんの特性として注目しなければならない点がある。それは早期発見なら90%以上の確率で治るということだ。乳房切除という残念な結果をもたらすことなく、美しい乳房のままがんを克服することができるということなのだ。だとしたら、何が何でも早期に発見しなくてはなるまい。そのためには若いからといって油断することなく、定期的に検診を受けることが重要になる。
市では各種のがん検診の場を提供している中で、乳がんについても40歳以上の方を対象に集団検診や指定医療機関での検診の機会を設けている。特に今年は日中忙しい方のために夕方検診も実施する。ぜひ受診して欲しいものだ。今後はもっと若い世代の女性も対象とするように考えなくてはならないと思う。
また、早期発見のためのセルフチェックも大切なことなので、正しい知識の普及のための乳がんセミナーを開催することとしている。平成21年9月27日の日曜日にCiC5階ホールにおいて講演やパフォーマンスを予定しているので、特に若い世代の皆さんに参加していただきたい。
先にも書いたが、女性の乳房は気高き女神の乳房だと思う。生命の息吹の源泉だ。大切にして欲しいものだと心から思う。