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雪道を歩く人のために

森 雅志 2010.03.05
 今年の冬は雪が多かった。12月の中旬から積雪があったのは久しぶりである。おかげで合併して初めての雪のあるスキー場開きとなった。その後の雪の降り方もスキー場にとっては願ったような状況が続いた。もっとも、スキー場にとって好都合でも、道路除雪や歩道除雪にとっては大変な冬であった。除雪に従事してもらった関係者に感謝申し上げる。深夜、早朝を問わずの除雪作業に頭が下がる思いである。
 除雪は人々が動き出す通勤時間帯までにどの程度まで作業が進むかが一つのポイントになる。通勤時間帯の渋滞が起きると除雪車が動きにくくなるからである。また除雪をした後であっても通勤時間帯めがけて大量の降雪があると圧雪状態になりやすく、それがまた渋滞をひどくしてしまう。夜間にだけ雪が降るのならいいのだが…。
 そういう風に考えてみると地下水による融雪装置の効果は大きいと思う。昼も夜も雪を溶かしてくれるからである。しかし、車にとっては都合の良い融雪装置も歩行者の立場からは必ずしも最適のものとは言えない。排水口に雪がたまるなどした場合に道路上に水があふれるという事態になるからである。そしてそういった道路を何事もないかのように走り抜けていく車が多い。当然のこととして道路わきの水をはねあげ、それが歩行者にかかってしまうこととなる。寒い雪道を歩いているうえに、冷たい水を浴びせられるというのはたまったものではない。しかしそういう事態を目にすることはしばしばである。どうして歩行者に対する配慮ができないのだろう。
歩道除雪が後回しになることが多いだけに車道を歩く歩行者が増える。そういう歩行者のそばを減速もせずに通り過ぎる車や、シャーベット状の雪をはねあげていく車も多い。
 そういう光景を目にすると嫌な思いになる。少なくとも自分はそんな運転をしないでおこうと思う。最近は自分で運転する機会が少ないが、かつては毎日かなりの距離を自動車で移動していた。雪の日だけでなく、雨の日であってもいつも歩行者に迷惑をかけぬように減速をしたり、反対車線にはみ出したりして運転していた。その気持ちを大切にしたい。
 ほとんどの人が、子供の頃に車から水をかけられたという経験をしているのではなかろうか。僕が小学生の頃は未舗装道路が沢山あって、雨が降るとあちこちに水溜りができた。そこをトラックなどが通ると水溜りの水が大きくはねあがったものだ。傘で防御しようとするのだが失敗することもあって、全身水浸しになって泣きたい思いをした記憶がある。だからこそ歩行者に配慮しようという気持ちになってくる。それが自然だと思うのだが…。時々見かける水かけ運転のドライバーはそんな経験がないのだろうか。
 案外、周囲に気づかいのできない人が増えているのかもしれないなあ。かく言う僕自身も、注意して運転しているつもりでも誰かに水をかけてしまったり、泥をはねたりしていたかもしれない。自分の気づかないところで誰かに迷惑をかけていることもあるに違いない。もって、他山の石と銘ずべきか。