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『恋におちて』

森 雅志 2010.12.05
 今年の冬もグランドプラザで「エコリンク」が開催される。特殊な樹脂パネルで作ったリンク上を普通のアイススケート用の靴を履いて滑るという企画。アイススケート用リンクは一般に冷却装置で氷を作る仕掛けだが、この「エコリンク」は冷却装置を使わないので電気を消費せず、環境にやさしいリンクとなっていることから「エコリンク」と名づけられている。氷のリンクに比べて事業費や電気代が大幅に節約できるという優れものなのである。
 グランドプラザの中に、約30m×約10mという大きさのリンクが設置される。中心商店街の真ん中という立地を考えれば、充分な広さだと思う。一昨年、昨年に続き今年は三回目の実施ということになるのだが、ぜひとも多くの皆さんに街中スケートを楽しんで欲しいものだ。今年の実施期間は12月11日の土曜日から年が明けた1月10日、月曜日までの1カ月間。年末年始も休まず開催するという頑張りよう。街中に大きな歓声が響くことを期待したい。なお、料金は大人500円、中学生・高校生・大学生が300円、小学生以下は100円であり、全て貸しスケート靴付きの料金となっている。
 さて、この「エコリンク」は一人の女性の提案を受けて企画されたものである。グランドプラザが完成した後、街の中の広場とも言うべきこの空間について、どのように使えば良いのかというアイデア募集を行ったところ、ある女性からニューヨークのロックフェラーセンター前の広場のように冬場にスケートリンクとしたらどうかという提案があった。ロックフェラーセンター前のスケートリンクは全米一大きなクリスマスツリーとともに高い人気がありひとつの風物詩となっている。このロマンチックな提案に僕らはすぐに魅せられてしまい、多くの人や企業に支援をお願いしながら何とか実現することができたのである。何とか富山市の冬の風物詩として育ってほしいものだ。
 ロックフェラーセンター前のスケートリンクと言えば多くの映画のロケ地にもなっている。「ホーム・アローン2」のエンディングでケビンが母親と再会するシーン。「オータム・イン・ニューヨーク」ではリチャード・ギアがこのスケートリンクでデートをする。「めぐり逢えたら」ではメグ・ライアンが婚約者に婚約解消を切り出すのがロックフェラーセンターじゃなかったっけ。
 しかし何と言ってもすぐに思い出すのが「恋におちて」の冒頭のシーンである。クリスマスシーズンを表現するために象徴的に使われている。メリル・ストリープとロバート・デ・ニーロという大物が表情豊かで抑制のきいた名演技でうならせる楽しい映画である。スケートリンクとクリスマスツリー、ベルを鳴らすサンタ、そして「メリークリスマス」という言葉が効果的にムードを盛り上げている。
 そう言えば名作「ある愛の詩」の冒頭シーンもセントラル・パークのスケートリンクじゃなかったっけ。ひょっとしたらスケートリンクにはロマンチックな気分にさせる魔法の力があるのかも知れない。「エコリンク」にもそんな力があって若者たちが「恋におちて」という風に魔法にかかると良いのだが…。