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歩いて 歩いて 天空へ

森 雅志 2012.10.05
 8月の17日、18日、19日の3日間の日程で「旧立山道ウォーク」に参加した。初日の朝7時に富山市役所を出発して、3日目の朝に登頂する雄山頂上までずっと歩き続けるという企画である。僕にしてみると2年ぶりの参加である。事前のトレーニングをしなきゃと思いつつ、結局ぶっつけ本番の挑戦ということになった。多少の不安を抱えてはいたものの何とか歩きとおすことができた。還暦を迎えたとは言え、まだ足腰は大丈夫ということだろう。それなりに自信に繋がった。一緒に歩いてくれた仲間に感謝したいと思う。
 初日は市役所から立山国際ホテルまでのコースである。もちろん急峻な山道を登るのではなく、アスファルトで舗装された一般道をひたすら歩くことになる。初日の総延長は31キロくらいだろうか。炎天下にアスファルトの上を歩き続けるのだから熱中症のようになる人や足に豆ができてしまい歩けなくなる人が出てくる。そのうえ、最後の最後に本宮の踏切から長い急坂をクリアしなければならない。なかなかの難所だといえよう。
 2日目は朝の6時にホテルを出発して室堂平までのコース。今年は八郎坂が通行止めとなったことから、立山駅から美女平まで材木坂を登る。ケーブルカーだと7分で到着するところを2時間かけて歩くのだ。そして美女平から室堂までの遠いこと。次第に無口になっていく。遠くで雷鳴がとどろき、ポツポツと雨も降ったけれど雨具を出すほどでもなく晴れ渡った青空の室堂に到着。室堂山荘のお風呂から見上げた雄山の威容は感動ものであった。2日目の総延長は22.4キロ。
 最後の日程は室堂から雄山頂上なので慣れたもの。順調に登って参拝ができた。こちらは約6キロ程度。
 さて、今回の参加者の中に平成17年の2回目に中学生として参加して以来、毎年参加してくれている若者がいた。今年は20歳の社会人である。この中学生の参加に感動して平成18年から中学生の参加費を助成してきている。今年も多くの中学生が参加してくれたものの、途中でリタイアする者が多く問題を残した。しかし中学生が大人と一緒に参加して山の魅力に触れるとともに社会で必要なマナーを身に付けたり、自然に挨拶ができるようになることは素晴らしいと思う。
 しかしながら運営の蔭には多くの指導者や山岳関係のスタッフ、医療看護の専門家などの献身的な協力があることを忘れてはならない。天候状態に応じたコースの下見、草刈、熱中症対策など参加者の体調に応じた医療看護体制、具合が悪くなった参加者の搬送体制など機動的・弾力的な対応が求められる。このため参加者の数に比してかなり多いスタッフが従事することになる。今回の場合は70人の参加者に対して32人のスタッフに働いてもらった。全員がボランティアである。途中には十分に安全を確保しなければならない箇所もあるので山岳協会に所属するベテランの指導者の同行は必須である。今回は途中でリタイアした人が多くスタッフの疲労感や負担感が大きかったようだ。難しい問題である。 立山登山の旧道を歩いて登頂することで標高差や距離感を体感する。そして立山の歴史と自然の素晴らしさを知り、富山市民としての誇りを再確認するという所期の目的は一定程度達成されたとも考えられる。来年はちょうど10回目である。これを機会に今後の方向性を考えなければならないと感じている。