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「イクメンMIKKOの子育て」とは?

森 雅志 2014.06.05
 民間のシンクタンクである日本創成会議が先に発表した、いわゆる“増田リスト”の衝撃が続いている。このまま少子化が進み、人口減少が深刻化し、若者を中心とした東京への人口移動が収束しないと仮定すると、2040年には全国の自治体の50パーセント程度が消滅する可能性があるという内容だからだ。
 東京オリンピックの開催はこの問題を考えるうえで大きな意味を持つ。オリンピックのための大型投資は東京への集中を高める方向に作用する可能性が高いからだ。さらには、大学・大学院教育の機能が改めて東京に集中しようとしている点も問題だ。そのうえ、大都市で学んだ若者が地方の企業などに就職するUターンやJターンが減少傾向にあり、地方に戻らない若者(特に女性)が増えてきている。そうしたことの結果として、出産年齢の中心である20〜39歳の若年女性が2010年と比較して2040年には半分以下になってしまう「消滅可能性都市」が全国の自治体の49.8パーセントに及ぶと“増田リスト”が指摘したのだ。幸い富山市はこの「消滅可能性都市」に名指しされてはいないものの、人口減少の波に大きくさらされることは避けられない。
 こういう指摘に対し、近年、日本の出生率が改善傾向にあるので人口減少は止まるのではないかという意見もある。しかしながら若年女性の数が急速に減少するため、出生率が少々上昇しても、出生数自体は減少し続けるとされている。したがって、まずは国の基本目標として2025年までに合計特殊出生率を少なくとも1.8程度に上げることを定め、その実現に向かって国を挙げて取り組むことが重要なのである。
 スウェーデンやフィンランドなどの北欧の国では積極的な子育て支援策や女性の労働環境の充実策などを展開することで出生率の向上を現実のものとしている。そんな背景もあって先日フィンランド大使館を訪問する機会を得た。その際にミッコ・コイヴマーさんという参事官と親しくなった。彼は「イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て」(かまくら春秋社)という本を出していて、その本を頂くことができた。この本によってフィンランドにおける制度と我が国のそれがいかに乖離しているかを知ることができた。特に父親休暇や両親休暇の制度の充実ぶりに驚いた。もとより人口が540万人ほどの国の制度をそのまま我が国に導入することには無理がある。それでも底流にある文化や男女の役割分担について学ぶことは大いに意義があると思う。一読をおすすめします。
中でも次の文が示唆することは大きいと思う。「父親休暇や父親月間を取得して長い期間子育てを担ってきた父親が、子育ての苦労と日々の家事とをよく理解するようになることが分かっています。この結果は家庭内における家事分担を公平にし、争いごとを減らすことにつながります。」という。この一文を読むだけで、我が国においても男性の育児休暇制度の利用を増やすことが重要だと思わされる。市としては何とかミッコさんを招いて講演会をするなどの啓蒙策を積極的に展開したいと考えている。まだまだわずかではあるが男性職員の中にも育児休暇を取得する者が出てきている。こういう職員が増えることを期待したいと思う。全国の首長の中にも育児休暇を取ったという話が散見される。運動の旗振り役としては結構なことだ。僕にそれを期待されても無理な話ではありますが…。もっとも絶対に不可能という訳でもないかな?(もちろん冗談です)