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Mind your manners. (マナーに気をつけて)

森 雅志 2019.03.05
 僕は学生時代に短い期間だけれどある団体の代表者の運転手をしていた。仕事がら有名ホテルや議員会館などの駐車場にも出入りした。この時に高級車の運転を仕事にしている運転手の人達から運転技術の指導を受けるという大変良い機会を得た。免許を取得してから日の浅い大学生の僕の運転が危なげで見ていられなかったのだろう、手取り足取りといった具合に徹底的にテクニックを仕込まれた。おかげで今まで大きな事故を起こすことなく運転してくることができた。基本的に僕は急発進することや急ブレーキを踏むこと、急ハンドルを切るということがない。どんなに急いでいても静かに運転する。同乗者が車酔いすることなく安心して乗っていられるような運転をいつも意識している。若い時の経験が生きているということだ。
 若い時に仕込まれたのは運転技術だけではない。大切なことはマナーを守ることだと教えられた。走行上の優先権の有無よりも、走っている複数の車の競合状態の中での全体利益の最適化を考えろと教えられた。みんながマナーを守れば、そして譲り合えば快適にかつスムーズに運転できるということだ。
 教えられたマナーの中には当然に駐車マナーも含まれる。駐車スペース枠をはみ出さない。白線に沿って真っ直ぐに止める。なによりも障害者等用駐車スペースに健常者である僕が停めてはならない。あたり前のことだ。
 ところが世の中にはこの障害者等用駐車スペースに我がもの顔で停める不適正利用者がいる。おそらくハンディがある人のためのスペースであると知りながらの不届きな振る舞いであろう。こういう人たちに注意と反省を促す目的で市内の商業施設や公共施設に障害者等用駐車スペースであることの案内標識を設置し、さらにマナーを守ることを訴えるポスターを掲示するというキャンペーンを数年前に市の施策として行った。キャンペーン実施前の調査では不適正利用率が、つまり不届き者の使用率が7割を超えていたのだが、実施後の調査ではマナーが改善したという回答が4割を超えていた。結果を見る限り、マナーを守るための運動をすることに意味があるということだ。
報道によれば県が今度「パーキングパーミット」と呼ばれる駐車スペースの適正利用を促す制度を導入するとのこと。利用できる対象者に利用証を交付する制度らしい。数年前に市が行ったキャンペーンでも分かるように、啓蒙活動を継続すれば成果が出るのだ。県の制度に協調しながら市としても更なる取り組みを考えていきたい。
 僕がこれは良くないマナー違反だと思っているものをもう一つ挙げておきたい。それはコンビニとかラーメン店などのお店で、交差点の角にあり、かつ広い駐車場を備えているお店の駐車場を交差点の赤信号で止まることを避けて勝手に斜め横断していく横着者の運転態度のことである。そのお店の利用者が普通に歩いて利用している中を猛スピードで突っ切っていく車に遭遇すると、驚くと同時に呆れさせられる。緊急性の無い時でも、よそ様の土地を勝手に横切って信号の停止時間を免れようとする車には呆れるばかりだ。私有地に無断で侵入している行為だと思う。社会の一員としての当然のマナーを守れない不適正ドライバーに猛省を促したい。そんな小さな近道、ショートカットをすることで人としての品格や評価を著しく落としていることを知るべきだと言いたい。
 ドライバーマナーを大切にしたいものだ。