婦中地区の熊野神社に伝わる稚児舞を見てきた。江戸時代以来の300年の歴史ある伝統行事であり、国指定重要無形民族文化財に指定されている。4人の子供たちの真剣な表情が新鮮であった。 同時に保存会の人々や地域の住民の伝承していこうとする熱意を強く感じた。自分も子供の頃に踊ったという人や、長い間太鼓や囃子方で参加してきたという人がたくさんいて、微笑ましく今年の主役である子供たちの舞を見守っている風情に感動した。こうやって地域の共感が醸成され、伝統が引き継がれていくのである。そして地縁のチカラが育まれいく。地域社会のあるべき姿がそこにあると思う。 僕の住む地域でも、この稚児舞ほどの伝統行事ではないものの、春祭りには獅子舞が行われている。子供の頃は一軒一軒の玄関先で舞われていて、一日中後を追いかけていた記憶がある。しかし僕の獅子舞の記憶はそれ以上には広がっていくことができないのだ。それは僕自身が当事者として獅子舞に参加することがなかったからである。高校を卒業した世代が青年団の活動として獅子舞を担っていたのだが、卒業と同時に上京してしまった僕は青年団活動にかかわることなく歳を重ねてしまい、獅子舞はおろか笛や太鼓にも触れることなく過ぎてきたのである。この歳になってみると、同世代や先輩ののオジサンがときどき獅子舞に飛び入りしている様子がとても羨ましく思う。伝統行事にかかわらずに歳を重ねてきたことのツケだと言えよう。世の中には地元の祭りに参加するためにわざわざ帰省する人も多いと聞く。その思いが大切なのだと思う。僕にそこまでの地域への思いがなかったということだ。そんな思いを持つこともなく酒ばかり飲んでいる青春であった。 子供の稚児舞を鑑賞しながらいささか感傷的になっていた。
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