平成27年7月15日
 暑い日が続く。異常なほどの暑さである。気を抜くとフラッと倒れてしまいそうなほどだ。この暑さの中、もうすぐ92歳になろうという父が元気に梨畑で働いている。顔を見るたびに熱中症に気をつけるように、水をたくさん飲むようにと声をかけているものの心配である。まあ、体の芯は僕よりはるかに強い人なのでちゃんと自己管理をしてくれるとは思うけれど…。なにせ、先だって富山駅からのバスツアーで改修の終わった姫路城まで行ってきたくらいなのだから。帰ってきてから聞いたところによれば、姫路城にとどまらずあの日本のマチュピチュと言われている天空の城、竹田城跡まで行ったとのこと。僕も一度訪ねたことがあるが、駐車場から結構な距離を歩かなければならないうえに、登り坂がきついコースである。よく登れたものだと驚いてしまった。「登りが大変だっただろう?」と聞いたら「同行者に迷惑をかけられないから頑張って先頭をあるいた」とのこと。恐るべし、91歳と10ヶ月。僕も負けずに歩かなきゃ。頑張ります。



平成27年7月12日
 今日は大失敗をしてしまった。猛反省、猛反省。自分の仕事の仕方のわきの甘さをつくづくと思い知らされた。まったく弁解の余地はなく、恥じ入るばかり。
 いったい何があったのか。それはほぼ十年ぶりに名誉市民を推戴するという極めて重要な式典の、それも名誉市民章をお渡しするというもっとも厳粛な瞬間に起きたのであった。壇上で推戴申し上げる方と向き合い、手にした名誉市民章に記載されている文言を読み上げようとしたところ、金色の台地に刻印のように掘り込んで記載されている文言がライトの反射の影響でまったく判読することができなかったのである。何度も光源との間の角度を変えてみたものの何の効果もなく、途方にくれてしまった。一瞬、アドリブでそれっぽく読んだふりをしようかと思ったものの、めったに機会のない名誉市民章の授与という儀式の重さを思うとあってはならないことだと思い至りあきらめたのであった。介添え役の女性職員が手を添えて光をさえぎってくれたうえに、彼女が小さな声で文言を告げてくれたので何とか口上をすますことができた。まったくみっともない限りであった。僕の仕事ぶりがここにあらわれている。いつだってリハーサルをしないのだから。小さい時からまったく予習をすることなく生きてきた僕の習い性なのである。その結果がこの体たらくなのである。
 推戴申し上げた中尾様には深く、深くお詫び申し上げたものの、もっとも厳粛であるべき瞬間を汚してしまった事実は取り消すことなど出来ない。こういったところが僕の弱点であり、限界なのである。猛省しきりである。今日の日の記憶は生涯忘れることはあるまい。修養が足らないことを思い知らされた。
 大きなお心でご寛恕いただいた中尾様に心からの感謝。なにとぞこれからもご指導いただくことを願うばかりである。
平成27年7月7日
 先に紹介した久世光彦さんのエッセイで初めて知ったのだが、白秋の童謡に「夜中」というものがあるらしい。あまりに怖い歌なので驚いてしまった。
  
   おうちの寝間で
   わたしは寝てた
   あかりが点いて
   人ごえしてた

   見知らぬ部屋に
   わたしは寝てる
   あかりが点いて
   人ごえしてる

   どこだか知らぬ
   誰だか知らぬ
   あかりが点いて
   人ごえしてる


 というもの。怖い時代があったのだなあ。ああ、なんという悲しさだろうか。言葉が見つからない。


  閑話休題

 今の時代はそれぞれが自分の個室に寝てる状況だから、もう忘れてしまった感覚だけれども、僕が子供の頃は居間の隣の部屋に寝ていた時代が長かった。ふすまで仕切られているだけなので居間で話している大人の声で目が覚めたということが何度もあった。深夜なのにぼそぼそと大人たちが話している記憶もある。内容まで聞き取れないものの、何か困ったことが起きているのだろうという予感がして眠れなかった日の記憶もある。久しぶりにそんなことを思い出してしまった。親たちの苦労がしのばれる。